【検証】2日連続「斜行→申し立て→棄却」――小林美駒・坂井瑠星の騎乗が問いかけた“降着ルール”への賛否

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2026年6月の最終週、JRAの開催で「斜行」「降着の申し立て」「棄却」という同じ流れが2日続けて起きた。

土曜(6月27日)は福島2Rで坂井瑠星騎手、日曜(6月28日)は函館記念で重賞初制覇を飾った小林美駒騎手。どちらも直線で斜行し、被害を受けた側から(あるいは被害馬陣営から)降着を求める申し立てが出たものの、いずれも着順は動かなかった。

「制裁は科されたのに、なぜ着順は変わらないのか」――この2日間は、現行の降着ルールそのものにファンの視線を集める結果になった。本記事では、賛否どちらにも肩入れせず、何が起きたのかを順を追って整理していきたい。


まず事実を整理――6月27日 福島2R・坂井瑠星騎手

項目内容
レース福島2R 3歳未勝利・ダート1700m(15頭立て)
1位入線スターツトゥデイ(坂井瑠星騎手)
2位入線テンオンスゴールド(江田照男騎手)※鼻差
制裁坂井騎手に過怠金3万円(直線で内側へ斜行)
申し立て江田騎手が降着の裁決を求めて申し立て → 棄却
結果到達順位通り確定(1着スターツトゥデイ)

鼻差の決着だった一戦で、勝ったスターツトゥデイが最後の直線で内側に斜行。これに対し、2位入線したテンオンスゴールドの江田照男騎手(54)が、進路の取り方について降着の裁決を求める申し立てを行った。

注目を集めたのは、この申し立てが「騎手単独では14年ぶり」という異例さだった。JRAによれば、騎手単独の申し立ては2012年ジャパンCのモッセ騎手以来。騎手・調教師2人による申し立ても2013年AJCC以来例がなく、いずれも到達順位通りに確定している。つまり「申し立てても着順が動いた例が近年ほぼない」という現実が、この件の背景にある。


函館記念2026・小林美駒騎手――重賞初Vと“申し訳ない気持ち”

翌28日、舞台はG3・函館記念(芝2000m)へ移る。

項目内容
レース第62回 函館記念・G3(芝2000m・15頭立て)
1着ファウストラーゼン(小林美駒騎手・10番人気)
2着ケリフレッドアスク(北村友一騎手・7番人気)※1/2馬身差
3着ピースワンデュック(佐々木大輔騎手・9番人気)
制裁小林騎手に開催4日間の騎乗停止(直線で外側へ斜行)
申し立て被害馬陣営からの降着申し立て → 棄却
結果到達順位通り確定(長時間審議の末)

10番人気のファウストラーゼンを勝利に導いた小林美駒騎手(21)は、デビュー4年目・4度目の重賞挑戦での初タイトル。藤田菜七子、今村聖奈、永島まなみに次ぐ、JRA女性騎手では史上4人目の重賞制覇という快挙だった。

ただ、勝ち馬は最後の直線で外側に斜行し、2着ケリフレッドアスク(北村友一騎手)の進路に影響を与えた。被害馬陣営からは降着を求める申し立てが出され、長時間の審議に。最終的に着順は到達順位のまま確定したが、小林騎手には開催4日間の騎乗停止が科された。

レース後、小林騎手は直線での斜行について率直に非を認め、馬と関係者への感謝を語っている。ガッツポーズで喜びを爆発させた直後に、自らの騎乗を反省するコメントを残した形だ。


2日間に共通する論点――そもそも「降着」とは何か

両日のケースを並べると、論点はひとつに集約される。**「斜行による制裁(過怠金・騎乗停止)は出るのに、なぜ着順は変わらないのか」**だ。

JRAの現行ルールでは、降着が適用されるのは「加害馬の違反行為によって被害馬の走行が妨害され、その妨害がなければ被害馬が加害馬より先に入線していたと判断される場合」とされている。

つまり、

  • 斜行などの違反があった → 騎手への制裁(過怠金・騎乗停止)の対象になる
  • ただし「妨害がなければ着順が入れ替わっていた」と認められなければ → 降着には至らない

という二段構えになっている。坂井騎手のケースも小林騎手のケースも、「違反はあったが、それがなければ着順が入れ替わっていたとまでは認められない」と判断された、というのが裁決の建て付けだ。


賛否――批判する声と、擁護する声

批判的な見方

ファンの間からは、近年の運用に対して厳しい声が上がっている。代表的なのは次のような論調だ。

  • 「制裁は出るのに着順が変わらないなら、被害を受けた側が報われない」
  • 「鼻差・ハナ差の決着で接触があったなら、もっと踏み込んで審議すべきでは」
  • 「地方競馬では降着がちょくちょく出るのに、中央は基準が厳しすぎるのではないか」

特に2日連続で同じ「斜行→申し立て→棄却」が続いたことで、「現行ルールは加害側に甘く、被害側に厳しいのではないか」という疑問が可視化された格好だ。小林騎手のケースでは、妨害があった上での勝利に対してガッツポーズが出たことについても、複雑な受け止めをするファンがいた。元騎手の安藤勝己氏も、降着にならなかったことに安堵する趣旨のコメントを残している。

擁護・冷静な見方

一方で、両騎手をことさら責めるのは筋違い、という見方も根強い。

  • 斜行はレース中に起こりうるもので、故意ではない。だからこそ「降着(着順変更)」ではなく「制裁」で処理されている
  • 小林騎手はレース後、自らの斜行をすぐに認めて謝罪しており、隠したりごまかしたりしていない
  • 「妨害がなければ着順が入れ替わっていたか」を厳格に判断するルール自体は、むしろ恣意的な降着を防ぐための仕組みでもある
  • 若手・女性騎手の重賞初制覇という出来事そのものは、純粋に祝福されてよい

ルールが「厳しすぎる」のか「適正」なのかは、立場によって評価が割れるところだ。


江田照男騎手の“真意”――降着ではなく「問題提起」だった

この2日間を語る上で外せないのが、土曜に申し立てを行った江田照男騎手本人の言葉だ。日曜にすべての騎乗を終えた江田騎手は、自ら取材に応じ、申し立ての意図を丁寧に説明している。

要点はこうだ。江田騎手は「降着を主張したかったわけではない」と明言。あれぐらいの差の接戦なら審議ランプは点いたほうがいい、それは馬券を買ってくれるファンのためでもある――という趣旨を語った。実際、裁決委員に「これは降着だ」と訴えたわけではないという。

つまり江田騎手の申し立ては、「坂井騎手を降着させたい」という個人的な異議というより、「微妙な接触はきちんと審議のテーブルに乗せるべきではないか」という、ルール運用そのものへの問題提起だったと読み取れる。14年ぶりの騎手単独申し立てが、結果的に降着ルールの議論を呼び起こすきっかけになった。


まとめ

2日間で起きたことを、もう一度シンプルに並べておく。

日付騎手内容制裁申し立て
6/27坂井瑠星福島2Rで内側へ斜行過怠金3万円江田騎手が申し立て→棄却
6/28小林美駒函館記念で外側へ斜行開催4日間の騎乗停止被害馬陣営が申し立て→棄却

共通するのは、「制裁は科されたが、着順は動かなかった」という一点。そしてその背景には、「妨害がなければ着順が入れ替わっていたか」を厳格に問う現行の降着ルールがある。

このルールを「厳しすぎる」と見るか「適正」と見るか。被害側の心情を重く見るか、恣意的な降着を防ぐ仕組みを重く見るか。どちらの言い分にも理がある以上、簡単に白黒はつけにくい。


管理人のひとこと

正直、この2日間を見ていて思ったのは、「誰が悪いのか」を犯人探しするより、「ルールがファンの納得感に追いついているか」を考えたほうが建設的だな、ということです。

坂井騎手も小林騎手も、レースの中で起きた斜行であって、悪意があったわけではないでしょう。小林騎手にいたっては、嬉しい重賞初制覇の直後に自分の非をきちんと認めて謝っている。そこは責められるところではないと思います。

一方で、江田騎手が14年ぶりに声を上げた意味も重い。「審議ランプくらいは点けてほしい」というのは、馬券を握りしめてゴール板を見つめている我々ファンの気持ちそのものでもあります。降着が出る・出ないの前に、「ちゃんと見て、ちゃんと審議してくれている」という手応えがほしい――その一点は、批判派・擁護派の境目なく共有できる願いなんじゃないでしょうか。

答えのない問いですが、だからこそ、こうして両方の視点を並べて考えてみる価値はあると思っています。皆さんはどう感じましたか?

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