ヴィクトリアマイルは、4歳以上の牝馬だけが出走できる東京芝1600mのG1です。2006年に創設された比較的新しいレースで、春の古馬牝馬にとって最大の目標になっています。創設の経緯や名前の由来、舞台となる東京芝1600mの特徴、過去10年の勝ち馬と記録まで、基本をまとめました。
ヴィクトリアマイルとは
春に行われる古馬牝馬のマイルG1
ヴィクトリアマイルは、毎年5月に東京競馬場で行われる4歳以上の牝馬限定G1です。負担重量は年齢と性別で決まる「定量」で、出走馬がすべて4歳以上の牝馬のため、全馬が同じ重さを背負って走ります(2023年以降は56kg)。外国馬も出走できる国際競走で、秋のエリザベス女王杯と並ぶ古馬牝馬の大舞台です。
主な前哨戦は、阪神牝馬ステークス(G2)と福島牝馬ステークス(G3)です。どちらも1着馬にはヴィクトリアマイルへの優先出走権が与えられます。優先出走権とは、出走を希望する馬が多い場合でも優先して出走できる権利のことです。
ヴィクトリアマイルの基本データ
| 創設 | 2006年(創設時からG1) |
| 条件 | 4歳以上牝馬・定量(国際競走) |
| コース | 東京競馬場・芝1600m(左回り) |
| 主な前哨戦 | 阪神牝馬S・福島牝馬S(各1着馬に優先出走権) |
| 2026年 | 5月17日(日)・第21回 |
創設の経緯と名前の由来
「牝馬は早めに繁殖へ」という考え方の変化
かつての日本では、生産の原点である牝馬はできるだけ早く引退させ、繁殖牝馬(子どもを産む母馬)として牧場に戻すのが望ましいと考えられていました。そのため、古馬になった牝馬が目標にできるG1はなかなか作られませんでした。
流れが変わったのは1996年以降です。エリザベス女王杯が古馬牝馬にも開放され、古馬牝馬の重賞が増えてレースの間隔も整えられると、長く現役を続けて活躍する牝馬が多くなりました。そうした牝馬からも優秀な子どもが生まれるようになり、生産界の考え方も変化していきます。こうした背景から、春に古馬牝馬が目指せるG1として2006年に誕生したのがヴィクトリアマイルです。
名前はローマ神話の勝利の女神から
レース名の「ヴィクトリア(Victoria)」は、ローマ神話に登場する勝利の女神のことです。第1回の2006年はダンスインザムードが優勝しました。その後もウオッカ(2009年)、ブエナビスタ(2010年)、アパパネ(2011年)、アーモンドアイ(2020年)、グランアレグリア(2021年)と、時代を代表する名牝が勝ち馬に名を連ねています。
東京芝1600mの特徴
2コーナー付近からスタートし、長い直線で決着
舞台の東京競馬場は左回りで、芝コースの1周は2083.1m、最後の直線は525.9mあります。芝1600mのスタート地点は2コーナー付近で、長い向正面を走ってから3コーナーへ入ります。3コーナーの手前には高低差1.5mの上り坂があり、最後の直線では残り460m付近から300m付近にかけて高低差約2mの坂が待ち構えます。坂を上りきってからも、ゴールまでまだ約300mあります。
| スタート地点 | 2コーナー付近 |
| 1周の距離 | 2083.1m(Aコース) |
| 最後の直線 | 525.9m |
| 直線の坂 | 残り460m〜300m付近、高低差約2m |
カーブがゆったりしていて幅員も広いため、展開の紛れが起きにくく、馬の能力がそのまま結果に表れやすいコースといわれます。マイル戦でもスピードだけでは押し切れず、長い直線と坂をこなす持久力が問われるのが特徴です。約3週間後には同じ東京芝1600mで安田記念が行われ、グランアレグリアやソングラインのように両方のレースを制した名牝もいます。
過去10年の勝ち馬と記録
ヴィクトリアマイル過去10年の勝ち馬
| 年 | 勝ち馬 | 騎手 | タイム |
| 2026年 | エンブロイダリー | C.ルメール | 1分30秒9 |
| 2025年 | アスコリピチェーノ | C.ルメール | 1分32秒1 |
| 2024年 | テンハッピーローズ | 津村明秀 | 1分31秒8 |
| 2023年 | ソングライン | 戸崎圭太 | 1分32秒2 |
| 2022年 | ソダシ | 吉田隼人 | 1分32秒2 |
| 2021年 | グランアレグリア | C.ルメール | 1分31秒0 |
| 2020年 | アーモンドアイ | C.ルメール | 1分30秒6 |
| 2019年 | ノームコア | D.レーン | 1分30秒5 |
| 2018年 | ジュールポレール | 幸英明 | 1分32秒3 |
| 2017年 | アドマイヤリード | C.ルメール | 1分33秒9 |
この10年では、C.ルメール騎手が5勝を挙げています。
連覇、レースレコード、大波乱
ヴィクトリアマイルを連覇したのは2頭です。ヴィルシーナが2013年と2014年、ストレイトガールが2015年と2016年に続けて勝ちました。ストレイトガールの2度目の優勝は7歳のときで、年齢を重ねても力を発揮できる牝馬がいることを示しました。
レースレコードは、2019年にノームコアが記録した1分30秒5です。2020年のアーモンドアイ(1分30秒6)、2026年のエンブロイダリー(1分30秒9)も1分30秒台の速い決着でした。
一方で、2024年はテンハッピーローズが14番人気、単勝208.6倍で勝つ大波乱になりました。鞍上の津村明秀騎手にとっても、デビュー21年目でつかんだ初めてのG1タイトルでした。
2026年のヴィクトリアマイル
エンブロイダリーがG1・3勝目
2026年の第21回は5月17日に行われ、1番人気のエンブロイダリーがC.ルメール騎手とのコンビで1分30秒9で優勝しました。2着のカムニャックに1馬身1/4差をつける完勝で、2025年の桜花賞、秋華賞に続く3つ目のG1タイトルです。レース前の見どころは【ヴィクトリアマイル2026展望】エンブロイダリーvsカムニャックの2強決戦——5月17日東京芝1600mで春の女王が決まるで紹介しています。秋の古馬牝馬の大一番については、エリザベス女王杯とは?創設の歴史から京都芝2200mの特徴、歴代の名牝まで基本を解説もあわせてご覧ください。
押さえておきたいポイント
- 2006年創設、4歳以上の牝馬が東京芝1600mで争う春のG1
- 前哨戦は阪神牝馬Sと福島牝馬S、それぞれ1着馬に優先出走権
- 連覇はヴィルシーナとストレイトガールの2頭
- レースレコードは2019年ノームコアの1分30秒5
ほかのG1・三冠・サマーシリーズの解説は、JRAのG1・シリーズ解説まとめから一覧で読めます。
管理人のひとこと
牝馬は早く繁殖へ、という時代から、古馬になっても輝き続ける牝馬のための舞台が生まれたと知ると、このレースの見え方が少し変わります。ウオッカやアーモンドアイのような女王が勝つ年もあれば、2024年のテンハッピーローズのような驚きの年もあり、毎年違うドラマがあるのが魅力です。2027年はどんな女王が誕生するのか、今から楽しみです。
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