それは「擬人化」を超えた、魂の再演だった
2025年12月、一つの漫画が幕を下ろしました。
『週刊ヤングジャンプ』で連載されていた「ウマ娘 シンデレラグレイ」の完結。
正直に言います。ウマ娘のゲームをしており、アニメも見ていました。漫画に期待をしていなかったというと嘘になりますが、読み始めた当初は「アニメのスピンオフレベル」だと思っていました。 しかし、最終話を読み終えた今、その認識は完全に間違っていたと断言できます。
これは、「史実」への徹底的なリスペクトと、「漫画(フィクション)」だからこそ描ける表現が、奇跡的なバランスで融合した、日本競馬漫画史に残る作品だと思います。
作者の久住太陽先生は、単に史実をなぞっただけではありません。当時の空気を、匂いを、そして馬たちの「魂」を、ペン先から執念で絞り出し、現代に蘇らせてくれました。
大げさではなく本当にそう思うほどの作品でした。
今回巻いかにして「怪物・オグリキャップ」を描き切ったのかを、熱く、重く、振り返ります。
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❶ 笠松~中央入り:久住先生が描いた現実の美学
まず触れておきたいのが、序盤の「笠松編」における空気感です。
『ウマ娘』といえば、キラキラしたアイドル的な要素も魅力の一つですが、シングレの第1巻を開いた瞬間、ほとんどいない客、錆びついたゲート、舞い上がる砂埃、そして人々の野次。
久住先生は、オグリキャップの出自である「地方競馬の泥臭さ」を決して綺麗事にせず描きました。
オグリは生まれつき膝が悪く、不格好な走法で、それでも走ることが好きで好きで前に進む。
最初の入りで、この「圧倒的なリアリティ」を土台に置いたからこそ、単なるゲームのスピンオフアイドル漫画ではない。という印象付けがされ、後の「中央のエリートたち」との対比が際立ち、物語に重厚感が生まれたと思っています。
中央入り後に関しては、なんと言っても「オグリキャップクラシック参戦問題」
史実では中央入りが遅れたことで、クラシック登録が出来ないという問題がありました。 出走を熱望するファンの声などもありましたが、当時の規約を変更するには至らず、幻と消えました。
漫画では、当時のルールでクラシック出走が叶わなかったマルゼンスキーもキャラクターとして登場します。
ほんの数ページ、セリフも少ない小さなシーンですが、彼女が後輩オグリキャップを通してクラシックへの想いを語るシーンは今読んでもグッと来ます。私が作中でかなり好きなシーンです。
(※マルゼンスキーの最強伝説については、また後日「名馬列伝」で書くことが出来ればと思います!)
❷ 芦毛の頂上決戦:タマモクロスと分け合った「魂」
シングレ中盤のハイライトであり、「このシリーズが一番好き」という読者も多いのが、宿命のライバル・白い稲妻タマモクロスとの三連戦です。
史実でも「芦毛対決」として語り継がれていますが、漫画版の描写は、まさに「魂の削り合い」でした。
天皇賞(秋):白い稲妻が焦がした「目」
「芦毛は走らない」というジンクスを覆し、天皇賞春と宝塚記念を制し先に頂点に立っていたタマモクロス。 漫画では、彼女が纏うオーラが「雷神」のように描かれていたのが印象的です。
直線の攻防。 オグリの「勝利への渇望」に対し、タマモが見せたのは「背負っているものの重さ」でした。 家族のため、貧しさを乗り越えるため。 「領域(ゾーン)」に入った二人の描写は、もはやアイドル漫画、いやスポーツ漫画の枠を超え、バトル漫画のような迫力。
コンマ数秒、数センチの差で敗れたオグリの、あの悔しさに歪んだ表情。 あの一コマだけで、オグリキャップという馬の「負けず嫌い」な本質を表現しきっていました。
ジャパンカップ:世界という「壁」への共闘
続くジャパンカップ。ここでは一転して、「日本の大将」としての共闘が描かれました。
史実でも有名な凱旋門賞馬トニビアンカ(トニービン)やオベイユアマスター(ペイザバトラー)ら、海外の強豪たちが放つ「重圧」の描き方が凄まじかった。 世界レベルのフィジカルとスピードに、二人で必死に食らいつく姿。
結果はオベイユアマスターの勝利。 しかし、レース後にタマモとオグリが交わした、言葉少ななやり取り。 「世界は広いな」 悔しさを共有したことで、二人の関係は「ライバル」から「戦友」へと昇華しました。
有馬記念:灰色が白を飲み込んだ日
突然のタマモクロス有馬記念をラストランで引退発表。困惑するオグリキャップを始めとするライバルたち。
そして迎えた、タマモクロスの引退レースとなる有馬記念。 ここでの久住先生の演出は、鳥肌モノでした。
今までタマモの背中を追いかけていたオグリが、最終コーナーでついに並びかける。今までの想いを全てぶつけ合うような、互いの魂が叫び合うようなデッドヒート。
史実通りオグリが勝利しますが、漫画で描かれたのは、単なる勝ち負けではありませんでした。 ゴール板を駆け抜けた瞬間、タマモからオグリへ、「最強の座」というバトンが確かに渡された。 言葉ではなく、走りで語り合う「継承」の儀式。 史実の結果を知っているのに、ページをめくる手が汗ばむほどの緊張感。 この三連戦の描写こそ、シングレが最高傑作たる所以でしょう。
※ちなみに管理人は大のタマモクロス推しです。あの関西弁と稲妻が好きすぎます。
❸ 奈落からの帰還:そして「奇跡」は描かれた
タマモクロスが去った後、オグリを待っていたのは過酷な運命でした。 イナリワン、スーパークリークとの「平成三強」時代を経て、酷使による疲労、そして惨敗。
「オワコン」の描写から逃げない
久住先生の凄みは、オグリが落ちぶれていく様も容赦なく描いた点にあります。
天皇賞(秋)での敗北、ジャパンカップでの11着。 世間からは「オグリは終わった」と。 あんなに輝いていた瞳から光が消え、ボロボロになっていく姿を見るのは、ファンとして辛いものがありました。
しかし、この「徹底的な下げ」があったからこそ、最後に灰色のシンデレラが舞い戻る最高のラストに繋がったんだと思います。
引退・有馬記念
そして迎えた伝説のラストラン。 正直、このレースをどう漫画で表現するのか、不安もありました。 史実がドラマチックすぎて、フィクションが負けてしまうのではないかと。
しかし、それは杞憂でした。 久住先生が描いたのは、「静寂」でした。
スタート直後、無心で走るオグリ。 道中、かつてのライバルたちが背中を押す。
そして、第4コーナー。世界の色が変わりました。
最後に一言放ち。ゴール板を駆け抜けました。
「オグリ!オグリ!オグリ!」
見開きいっぱいに描かれた、中山競馬場を揺るがす17万人のオグリコール。
そして「右手を上げたオグリキャップ」
限界を超えたオグリの表情。 ゴールした瞬間の、あの突き抜けるような青空と、万雷の拍手。
史実の再現を超えて、「あの時、日本中が感じた感動」そのものを具現化して見せた。
読み終わった後、しばらく放心状態になるほどのエネルギーが、その数ページには込められていました。
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「この熱狂を、本棚に並べて一生の宝物にしたい」という方はこちら。 表紙のオグリの顔つきが、巻を追うごとに「少女」から「怪物」、そして「伝説」へと変わっていく様は圧巻です。
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🏁 まとめ:史実を知る者も、知らぬ者も
連載が完結した今、改めて思います。 久住太陽先生は、オグリキャップという馬を心から愛し、その馬生に関わった全てのホースマンに敬意を払い続けてくれました。
「ウマ娘」というフィルターを通すことで、史実の残酷さをマイルドにするのではなく、むしろ「感情」を増幅させて、より鮮烈に史実を心に刻み込んでくれたのです。
3月には最終巻となるコミックスが発売されます。 連載時の熱狂をそのままに、加筆修正でさらに研ぎ澄まされた「ラストラン」が見られることでしょう。
ありがとう、シンデレラグレイ。 ありがとう、久住先生。 そして、永遠の怪物・オグリキャップに、心からの花束を。



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