ウマ娘に、ついにあの子がやってきました。 その名は「キセキ」
スマートな見た目に反して、彼の史実はあまりにも「泥臭く」そして「ドラマチック」です。
G1勝ちは、たったの1勝。 しかし、これほどまでにファンに愛され、記憶に残っている馬はそうそういません。
今回は、エリート街道を外れ、泥にまみれながら走り続けた「愛すべき名優」キセキの物語を紐解きます。
エリートになれなかった春、夏の上り馬
父は名馬ルーラーシップ、母も重賞を勝った良血。 名前も「キセキ(奇跡)」。 彼は生まれた時からスターになることを約束されたような馬でした。
しかし、3歳の春。 同世代が皐月賞や日本ダービーでしのぎを削る中、キセキの名前はありませんでした。 デビューが遅れ、体質もまだ弱く、クラシック戦線には間に合わなかったのです。
彼が輝き始めたのは夏。 条件戦を連勝し、秋の「神戸新聞杯(G2)」でダービー馬レイデオロの2着に入り、ようやく最後の1冠・菊花賞への切符を手にします。
菊花賞はレイデオロを始め史上4度目のダービー1~3着馬不在という本命馬不在が発表され、キセキにもチャンスが回ってきました。
しかし、本番の京都競馬場で待っていたのは、地獄のような光景でした。
伝説の「泥んこ菊花賞」
2017年10月22日。第78回菊花賞。 この日の京都競馬場は、超大型の台風21号が直撃し、雨が降り続いていました。
芝コースはもはや「田んぼ」。 走れば水しぶきではなく、泥の塊が飛び散る最悪のコンディションです。
レースが始まると、異様な光景が広がりました。 どのジョッキーも、荒れ果てた内側のコースを嫌がり、大きく外へ外へと馬を持ち出したのです。 まるで障害レースのように泥を跳ね上げながら進む馬群。
そんな中、M.デムーロ騎手とキセキは覚悟を決めました。 4コーナー、他馬がスタミナを削られ失速していく中、キセキだけが大外から力強く伸びてくる。 泥で真っ黒になった馬体で、悲鳴のような歓声の中を突き抜け、先頭でゴール。
「これが、キセキだ!!」
3000mの激闘を制し、ついにG1馬の称号を手にした瞬間。
キセキが上がりタイム最速を計測しましたが、「39.6」という類を見ないタイムが凄まじい激闘を物語っています。
「世界レコード」を演出した大逃げ
翌2018年のジャパンカップ。 キセキはここで、競馬史に残るパフォーマンスを見せます。
相手は、最強女王アーモンドアイ。 史上最強とも名高い彼女にまともに戦っては勝てない。 そう悟ったのか、キセキはスタートから果敢にハナを奪い、大逃げを打ちました。
1000m通過は59秒9。 2400mの長丁場では無謀とも言えるハイペース。 しかし、キセキは止まりません。 後ろを引き離し、自分のペースでレースを支配し、直線を向いてもまだ脚色が衰えない。
「そのまま!粘れ!」
ファンの絶叫も虚しく、最後はアーモンドアイの異次元の末脚に屈し、2着に敗れました。 しかし、電光掲示板に表示されたアーモンドアイのタイムを見て、誰もが息を飲みました。
「2分20秒6」
2400mでの世界レコードが2:22.1。アーモンドアイは1.5秒縮めました。
世界レコードで勝ったのはアーモンドアイですが、このタイムを作ったのは間違いなく、限界まで逃げ粘ったキセキです。
そして当然キセキも当時の世界レコードを1.2秒上回っていたのです。
あのディープインパクトよりも、シンボリルドルフよりも、キタサンブラックよりも早い時計で走ったのです。
普段あまりコメントを残さない鞍上の川田騎手も「最高のレースでした。ただ相手が強すぎました。」と言うほど素晴らしいレースでした。
彼がいなければ、あの伝説のレコードは生まれませんでした。 主役を食うほどの「名脇役」ぶりを見せつけた、生涯最高のレースの一つです。
2025年。その記録を破る怪物が海外から来たのは、また別の機会に。
ゲートに泣き、それでも愛された晩年
菊花賞以降、キセキが勝利を挙げることは二度とありませんでした。
大阪杯2着、宝塚記念2着、翌年の世界レコードのジャパンカップも2着。 いつも全力で走り、いつもあと少し届かない。
年齢を重ねるにつれ、気性も難しくなりました。 ゲートの中で立ち上がったり、大きく出遅れて場内をどよめかせたり。 「ああ~、キセキまたやったよ(笑)」 そんな風に、ファンはハラハラしながらも、不器用な彼を愛さずにはいられませんでした。
結局、7歳まで走り続け、通算成績は33戦4勝。 G1勝ちは、あの雨の菊花賞だけ。 けれど、記録以上に「キセキ」という馬は、私たちの心に深く刻まれています。
奇跡は続く。2026年クラシックへ
引退後、キセキは種牡馬となりました。 そして2025年、彼の子供たち(産駒)がデビューを果たしています。
ということは……そうです。 今年、2026年のクラシック戦線(皐月賞・ダービー・菊花賞)には、キセキの子供たちが登場するのです!
父が間に合わなかった春のクラシック。 そして、父が伝説を作った最後の1冠・菊花賞。
泥にまみれながら走り抜けた父のバトンを受け継ぎ、子供たちがどんな「奇跡」を見せてくれるのか。 ウマ娘で彼のファンになった方は、ぜひ今年、現実の競馬でも「父キセキ」という文字を探して応援してみてください。
物語はまだ、終わっていないのですから。




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