競馬新聞やネットニュースを見ていると、こんな言葉を目にしませんか?
「○○(馬名)が『外厩』から帰厩しました」 「今回は『しがらき』仕上げで状態は万全!」
「外厩(がいきゅう)……?」
初心者のうちは「牧場に帰る=お休み(リフレッシュ)」というイメージがあるかもしれません。 でも、現代の競馬において、放牧は単なる夏休みではありません。 実は、この「外厩」こそが、強い馬を作るための秘密基地になっているんです。
今回は、なぜ今「外厩」が重要なのか? その裏にある「トレセンの定員事情」と合わせて、わかりやすく解説します。
そもそも、競走馬はどこに住んでいるの?
まず、基本のお話です。 競走馬はレースに出るために、JRAのトレーニングセンター(トレセン)という場所で生活しています。 でも、実はそこには「定員数」があるのをご存知ですか?
まずは、馬たちが生活する場所の違いを整理しておきましょう。
- 役割: レース直前の最終調整をする場所。学校でいう「教室」
- 場所: 滋賀県の栗東(りっとう)、茨城県の美浦(みほ)にある。
- ルール: 原則として、ここにいないと中央競馬のレースには出られない。
- 役割: 生まれたり、基礎体力をつける場所。「実家」
- 場所: 主に北海道(日高や社台)など。
悩める調教師と「馬房(ばぼう)の壁」
調教師(監督)は、たくさんの馬を預かっていますが、全員をトレセンに入れておくことはできません。 JRAから借りられる部屋(馬房)の数が決まっているからです。
これを学校に例えると、こんな状態です。
- クラスの生徒(管理馬):60人
- 教室の机(馬房):20個
生徒は60人いるのに、机は20個しかありません。全員を座らせることは物理的に不可能ですよね。 もし「机が空く」のをただ待っていたら、いつまで経ってもレースに出られない馬が出てきてしまいます。
そこで重要になるのが、「外厩(がいきゅう)」という存在です。
ただの牧場じゃない!「外厩」は第2のトレセン
机(馬房)に入れない間、馬たちはどうするか? ただ北海道の実家に帰って寝ているわけではありません。
トレセンの近くにある「強化合宿施設」のような牧場で、猛特訓をして待つのです。 これが「外厩」の正体です。
外厩(がいきゅう)
- 意味: トレセン外にある厩舎のような施設のこと。
- 特徴: トレセンと同じくらいの坂路(坂道のコース)や最新設備があり、レースに出られるレベルまで仕上げることができる。
- 代表的な施設:
- ノーザンファーム天栄(福島県): 関東馬の拠点
- ノーザンファームしがらき(滋賀県): 関西馬の拠点
- 山元トレセン(宮城県): 社台ファームの拠点
昔の放牧は「温泉療養」のようなイメージでしたが、今の外厩は「トップアスリート専用の強化合宿所」です。 ここで9割方仕上げてしまうので、トレセンに戻る頃には、馬はもう走れる体になっています。
究極の回転術「10日競馬」のカラクリ
外厩で体が仕上がっているということは、トレセンに戻ってから、1から鍛え直す必要がありません。
JRAには「トレセンに戻ってから10日間経過すれば、レースに出ていいですよ」というルールがあります。 ※正確には帰厩してから10日後の出走が可能
これを最大限に利用したのが、現代のスタンダードな戦い方です。
- 外厩でギリギリまで仕上げる。
- トレセンの机(馬房)が空いたら、サッと入る(帰厩)。
- 10日間だけ最終調整をして、レースに出る。
- レースが終わったら、すぐに外厩へ戻る(机を空ける)。
これを「10日競馬」と呼んだりします。 こうすることで、限られた「20個の机」をクルクルと回転させて、たくさんの馬を効率よくレースに出すことができるのです。
まとめ:これからは「どこから帰ってきたか」にも注目!
「休み明けだから走らないかも……」 もしそう思って馬券を外していたら、それはちょっともったいないかもしれません。
現代の競馬では、「休み明け(外厩帰り)」こそが、一番リフレッシュして、一番強くなっているタイミングであることが多いからです。
これからは新聞のコメント欄などで、「天栄帰り」「しがらき帰り」といった言葉を探してみてください。 「あ、この馬はしっかり特訓してきたんだな。勝負気配だな!」と分かれば、予想の自信に繋がりますよ!


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