[PR]
1. 奇跡は「日本」で生まれた
前回の記事で、サンデーサイレンスの血が増えすぎて、日本競馬が「お嫁さん探し」に困っていた話をしましたね。 (※前回の記事はこちら)
その問題を解決した真の救世主は、日本で生まれた一頭の若駒でした。
彼の名は「キングカメハメハ」 ハワイの大王の名を持つ彼は、その名の通り、日本の競馬界を統べる王となります。
彼は北海道のノーザンファームで生まれましたが、少し特殊な生まれ方をしていました。 専門用語で「持ち込み馬」と呼ばれます。
用語解説:持ち込み馬(もちこみば)→お母さん馬が妊娠した状態で日本に来て出産した子ども。
父は欧州の大種牡馬「キングマンボ」。母は「マンファス」。
「サンデーサイレンスの血を一滴も持たない、世界最高峰の良血」それが日本に舞い降りた奇跡でした。
2. セレクトセール:金子オーナーの「一目惚れ」
0歳の時、彼は「セレクトセール」というセリ市に出されます。 ここで運命の出会いが待っていました。
ディープインパクトの馬主としても知られる伝説の相馬眼の持ち主、金子真人(かねこまこと)オーナーです。
「セレクトセール前に3回牧場に下調べに行った。いくら出しても競り落とすつもりだった。」
当時としては高額な「7,800万円」という値がつきましたが、金子オーナーは迷わず競り落としました。 まだ誰も知らなかった「大王」の才能を、この時すでに見抜いていたのです。
3. 競走馬時代:常識破りの「変則二冠」
デビューしたキングカメハメハは、圧倒的な強さで勝ち進みます。 そして迎えた3歳の春、彼はとんでもないローテーションに挑戦します。
- NHKマイルカップ(G1・1600m): スピードが命のマイル戦
- 日本ダービー(G1・2400m): スタミナが必要な長距離戦
普通なら、どちらか片方を目指します。距離も求められる能力も全く違うからです。 しかし、彼はNHKマイルCを当時のレースレコードで圧勝したその足で、日本ダービーも当時のレースレコードで圧勝してしまったのです。
これを「変則二冠(へんそくにかん)」と呼びます。歴代でも達成しているのはこの馬と2008年にディープスカイのみという大偉業です。
並み居るサンデーサイレンス系のライバルたち(ハーツクライやダイワメジャーなど)をスピードとパワーでねじ伏せたその姿は、まさに「新しい時代の王」の誕生でした。
しかし、その秋。 神戸新聞杯を勝った後に「屈腱炎(くっけんえん)」を発症。
8戦7勝。ファンの大きな期待を背に太く短い競走生活に幕を下ろし、彼は種牡馬となることになります。
4. 種牡馬時代:日本競馬を救った「交配」
引退後、彼を待っていたのは「レース以上の大仕事」でした。 それは「牧場に溢れかえるサンデーサイレンス系との血脈を繋ぐこと」
- サンデーサイレンスの血を持たない彼は、ほとんどの牝馬と結婚できる。
- しかも、芝・ダート・短距離・長距離、どんな子供でも出せる万能性がある。
彼は期待に応え、ディープインパクトと双璧をなす「二大巨頭」として君臨しました。彼らがいなければ、今の日本競馬の繁栄は100%あり得なかったと言えるでしょう。
※この2頭を個人で所有している金子オーナーはあまりの相馬眼に「人生2度目の転生者」と言われています。
5. 偉大なる血の継承
最後に、彼が送り出した代表的な子供たちと、彼を祖父に持つ孫たちを紹介しましょう。
芝もダートも、短距離も長距離も。このラインナップを見れば、彼がいかに「万能」だったか分かるはずです。
活躍した子供たち
- ロードカナロア
- 世界の龍王。世界最高峰の香港スプリントを連覇した、日本史上最強のスプリンター。
- ドゥラメンテ
- 父と同じくダービーを制した二冠馬。荒々しい気性と爆発的な末脚を受け継ぎました。
- アパパネ
- 史上3頭目の牝馬三冠(トリプルティアラ)を達成。金子オーナーの勝負服で母としても活躍。
- ホッコータルマエ
- G1級競走を10勝したダートの王様。ダートの子どももいける。と父の万能性を証明しました。
- レイデオロ
- 名伯楽・藤沢和雄調教師にダービー制覇をプレゼントした名馬。
- ルーラーシップ
- 香港のG1(QE2世C)を圧勝した大器。種牡馬としてもキセキなどを輩出。
- ラブリーデイ
- ある年突然覚醒し、天皇賞(秋)や宝塚記念など重賞6勝を挙げた中距離の鬼。
- ローズキングダム
- ジャパンカップを制した貴公子。父譲りの器用さと勝負根性を持っていました。
- スタニングローズ
- 孫世代かと思いきや、父の晩年に生まれた傑作。秋華賞を制し、父に新たなG1タイトルを届けました。
母の父として送り出した孫たち(3頭)
キングカメハメハの娘(お母さんになった馬)からも、とんでもない怪物が生まれています。
- ソダシ(父クロフネ): 白毛のアイドル。桜花賞馬。
- デアリングタクト(父エピファネイア): 史上初の無敗での牝馬三冠馬。
- インディチャンプ(父ステイゴールド): アーモンドアイを破ったマイル王。

キングカメハメハの凄いところは、この一覧の馬はほんの一部。
そしてこの子どもたちも偉大な子どもたちを残し続けているということです。
6. まとめ:永遠に生き続ける大王
2019年キングカメハメハはこの世を去りました。 しかし、彼の血は子供たち、孫たちへと受け継がれ、今も毎週末のレースで走り続けています。
海外の血を引きながら、日本で頂点に立ち、日本競馬界の窮地を救った大王。
彼こそが、日本競馬を変えた真のヒーローだったのだと。
今後の名馬列伝では彼の子どもも多数登場予定ですので更新をお待ちください。



コメント